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BlackCatJayの雑談空間

黒猫Jayの個人的な雑談を集めた空間です。 主に扱うのは、創作と感想とその他です。

フィクションに関する雑談:「事実は小説よりも奇なり」は正しくない

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フィクションに関する雑談:「事実は小説よりも奇なり」は正しくない

 

「事実は小説よりも奇なり」



トーマス・フィリップス(1770-1845)によって描かれた『アラブ衣装のバイロン卿』

この言葉はイギリスの詩人『ジョージ・ゴードン・バイロン(1788~1824)』の『ドン・ジュアン』にある「Fact is stranger than fiction.」という文章から来ている。正確にはドン・ジュアンの第14歌に出る下記の部分から来ている。

 

“奇妙な事だが、事実だ

事実が常に奇妙であり
作り話よりも奇妙だから”



 

言葉通り人の想像により作られた話よりも、実話の方が奇妙であるとの話しだ。 しかし、本当にそうだろうか。想像力の元は経験と知識からくる物であり、経験も知識も全て現実から精製されたものだ。つまり想像の原材料の全ては現実・事実から齎されたものだ。何処から根拠もなくいきなり降ってくる想像など無い訳だ。でも、小説…いや映画や漫画など全ての作り話を入れたいから「フィクション」に言い換えよう。もしフィクションを料理に例えるなら、食材の味の幅より料理の味の方がより豊かなように、現実を素材にしたフィクションの方が遥かに多様で奇妙な話しがあり得る筈であろう。     

 

そもそも、その言葉が出たバイロンの書いた『ドン・ジュアン』という小説だが、これは「ドン・ファン伝説」を元にして想像力を駆使して作り上げられた物語りだ。実祭の人間ではなく、人が作り上げた物語りで語られた言葉なのだ。とにかく、私達はその言葉について文句を言わないし、不満も持たない。「そんなものだろう」と納得しているからだろ。

なら何故事実より豊かな筈のフィクションを、事実よりは平凡だと思うのか?その答えは極めて簡単過ぎる。「事実は現実で起きてしまった以上、その内容がどうであろうかに関わらず受け入れざるを得ない」からだ。実例をあげてみよう。昔、海外のニュースでとあるマンションから落ちた赤ちゃんを偶然下を通っていた青年が救った事があった。そこまでなら「偶々下に人が通っていて良かった」で終わるが、話しには続きがある。数年後、青年が同じくマンションの下を通っていたいた時、前救った事のある赤ちゃんがまた落ちてきて今度も救ったのである。偶然一回だけだと只の出来事に過ぎないが、重ねられると必然としか言い様がない。これと同じ事が現実ではなく、物語りで語られたら皆さんはどう思うだろうが。直ぐにでも不満の声が聞こえそうだ。  

 

「ご都合主義じゃないか!」

 

 そう、フィクションは作り話しである故、安易な偶然の重ねが許せらていない。もしその様な物語りを読者に納得させる為には、そうなる訳・理屈・必然性を 作品の中で示さなくてはならない。実際に起きた話しをもう一つ述べてみよう。スクラッチ式の宝クジで一等を当てた人が、テレビ局の取材を受けた。当たった時の再現シーンを撮る為、彼はカメラマンと共に宝クジ売り場へ行った。彼が宝クジを買おうとしたら、顔を見て前回の当選者であるのを知った人が割り込んで 先に宝クジを買い、その次にクジを買った彼はコインで宝クジの銀箔を削り驚いたが、その驚く顔は決して演技ではなかった。なんと二等を当てたからである。自分より先に買おうと割り込んだ人を許さなかったなら、二人の運命は入れ替わる事もなかった。でも彼はそれを見逃し、また大金を手に入れた。

 

これと同じ話しをフィクションでやったら読者の反発を買うのは、説明するまでもなかろう。前言った通り、現実とフィクションでは『偶然の扱い』が全く違う。現実でコイン投げをし同じ面が連続で出続けると、見る人はみんな驚くだろう。だがフィクションでは読者が呆れるばかりである。この点は創作者がいくら頑張ったところで、覆される訳ではない。何かの理屈で理由付けをしないと読者は離れて行くだろ。運の良さがキャラクターの特徴だとか、その人に当たりクジを渡した者が居て裏で何かを企んでるとか、そう言った何かの訳無しで偶然を重ねる事への必然性を齎さなきゃならないのである。現実ではただ偶然が重なるだけでみんな驚いて拍手を送るのに! 

  

「全ての物語りの創作者は、この世を創った神に嫉妬するしかない」

 

これは創造主としての神の存在可否や信仰心とは関係ない。物語りを作る人が現実に対し妬ましい気持ちになるのも、仕方のない事がもしれない。ただ作って置くだけでは受け入れてもらえず、必ずそこに正当な理由を付けたり伏線を張ったりしなくちゃならないのだから。

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